東京地方裁判所 昭和45年(行ウ)236号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕本件不許可処分の適否について考えるに、原告らは、まず、し尿浄化槽内の残渣物は清掃法三条にいう汚物にあたらないので、し尿浄化槽清掃業は同法一五条一項はいう汚物取扱業にあたらない旨主張する。
清掃法は、汚物を衛生的に処理し、生活環境を清潔にして公衆衛生の向上を図ることを目的として制定されたものであり(同法一条)、同法三条において汚物とはごみ、燃えがら、汚でい、ふん尿およびねずみ等の死体をいうと規定している。
ところで、<証拠>を総合すれば、し尿浄化槽の仕組およびし尿浄化槽清掃業の業務の内容は次のとおりであることが認められ、この認定を覆えすに足りる証拠はない。
し尿浄化槽は大別して腐敗型のものと爆気型のものに分けることができる。腐敗型のものにおいては、水洗便所で人体から排泄されたふん尿が水や紙とともに導入管を通つて腐敗槽(消化室などとも呼ばれる。)へ流れ込み、そこで嫌気性細菌によりふん尿が消化されて水分と不消化物に分解され、水分は予備ろ過槽(沈澱室などとも呼ばれる。)を経て酸化槽へ移流し、そこで好気性細菌によりさらに消化分解され、最後に消毒槽で殺菌するとともに酸化化合物などを沈澱させ、浄化された水を放流口から放流する。腐敗槽の中で消化分解作用の結果生じた不消化物は炭酸ガスとともに槽の表面に浮上して厚いスポンジ質の層をつくり、これをスカムという。他方、爆気型のし尿浄化槽にあつては、爆気槽を回転させて細菌による消化分解作用を速めたりするほか、大体において腐敗型のものと同様の仕組になつている。し尿浄化槽清掃業の業務の内容は、まず浄化槽の内部を清掃し(すなわち、予備ろ過槽内の砕石を原則として取り出しブラシ等で洗浄し、酸化槽を圧力水で洗浄し、消毒槽を水洗する。)、腐敗槽内の物質や消毒槽内の沈澱物、洗浄水を汲み取つて、浄化槽の機能を保持することにあるが、さらに、電気関係、便器や導入管、水栓の故障修理、注薬、放流水の水質検査、汲取つた物の運搬、処分もその業務に含まれる。汲み取られる腐敗槽内の物質の中には、スカムや汚水のほか、清掃直前に流れ込んだふん尿そのものから細菌により消化分解中のふん尿を経てスカムになる直前のものまでいろいろな段階のものが含まれている。
右認定の事実にもとづいて考えるに、し尿浄化槽清掃業者により汲み取られる物質中には排泄直後のふん尿や消化分解中のふん尿が含まれており、これらは清掃法三条にいうふん尿にあたることは明らかであり、また、スカムや沈澱物は同条にいうふん尿といえるかどうかは問題であるとしても、前記の同法の制定された目的に照らして考えるとき、少なくとも同条にいう汚でいにはあたると解するのが相当である。すなわち、し尿浄化槽清掃業者により汲み取られるものは、同条にいうふん尿や汚でいの混入したものであつて、同条の汚物にあたると解するほかなく、し尿浄化槽清掃業にあつては浄化槽内部の清掃と右汚物の汲み取り、運搬、処分とは密接な関係にあることからみて、それは同法一五条一項にいう汚物取扱業にあたるというべきである。したがつて、同法二条の特別清掃地域(小金井市も右地域にあたる。)内においては、し尿浄化槽清掃業もその地域の市町村長の許可を受けなければこれを業として行なうことはできないのである(同法一五条一項)。
(高津環 牧山市治 上田豊三)